のんべんだらり

渡る世間は推しばかり

『27 -7order-』2/15マチネ、2/16マチソワ感想

せっかくインプットしたんだからアウトプットもしなければ! ということで、心のままに感想を書きます。

あくまでただの感想なので悪しからず…。ネタバレが嫌な人は読まない方がいいと思います。

頭に浮かぶままに書くので時系列もバラバラになると思うんですが、それでも大丈夫な方だけどうぞ。

①冒頭、世界観の説明について

「いつかの時代、どこかの国」という説明で始まり、「10年前に施行されたAZ法により…」からの「27年前、俺の親父は」でいきなり頭が大混乱!!!

いや、理解はできるんだけど「おや?」と思うのは止められないというか…。いつかの時代の10年前に施行された法…? 27年前に死んだ親父の日記…?

そしてキャラの名前が大抵日本名なので、いや日本では? という気持ちがどうしても押さえられなかった。

せめて「いつかの時代」か「どこかの国」のどっちかが無ければまだよかった気がするなあと思ったり思わなかったり。

こう考えると、『北斗の拳』の「時は200x年、世界は核の炎に包まれた!」ってかなり優秀なモノローグだったんだと感心してしまった。

②ショウはカズマを愛していたのか

これによって本作の地獄度合いが格段に違うと思う。

だって今まで付き合ってたと思われる男が、ポッと出の女に掻っ攫われてしまうんですよ? まあ本気じゃなくてカズマをなだめるための行為だったって考え方もあるだろうけど…。

恋人は他人に取られるわ、ロックは規制されるわ、挙げ句の果てにカズマは死ぬわで散々な目に合って、自分も逮捕されて他の仲間の消息もわからず、それでも音楽を捨てきれなくてCDショップを20年以上細々と続けてるとかあまりにも気の毒過ぎて…。

最終的にはジャニスがお得意様になってめでたしめでたし、みたいな雰囲気になってたけど、恋敵(?)と仕事するってどんな気持ちなんだろう。

こういう時、某ジャンルだとショウとユウマの間になんらかの関係が芽生えるのがセオリーっちゃセオリーなんだけど、ユウマは恐らくヘテロだということが劇中から読み取れるのでその線もなし。

一体誰がショウの拠り所になってくれるんだろうか…あんまりにも救いがなさすぎて悲しくなってしまった…。

③カズマはどうしてジャニスを愛したのか?

母親のトラウマで女性が苦手、わかる。

そのせいで男しか愛せなくなった、わかる。

でもジャニスは平気、なぜ???

いや、ジャニスが他の女性とは一線を画した何かを持った人物なら納得できるんだけど、割と女女してない?

高い声、無邪気な笑顔、甘え上手、そして美人。ステレオタイプな女性性を保有したキャラクターだと思うんだけど…。

「俺の心に風穴を開けた」

「ジャニスジョップリンみたいにイカす女だった」

って説明だけじゃ納得できない!!!

なんでもいいの、ジメジメしたところが無い天真爛漫さが俺にとって太陽みたいだったとか、その無邪気な眼差しは女というよりまるで子どものように清らかだったとか、単純に顔が好みだったとか…自分で書いといてアレだけどなんかクサいな…。

とにかく、ちょっと女性の話題が出ただけで自身を抱きしめて震えるほど女嫌いの男に、「でもコイツは大丈夫」って言われてもいやいや待ってわからん!!と思っちゃうんだよ〜。

劇中でリフレインされる言葉はその作品にとって重要なポイントだと思うんだけど、「女嫌い」ってアイデンティティがあるキャラなんだからそこはきちんとした理由が欲しかった。

「唯一の女性」を際立たせたいがために、カズマという人間を構成する根幹があっさり揺らいでしまった感があった。

セクシュアリティは流動的なものだと思うし、だからゲイだと思ってたらバイだった!ってことが起きても不思議じゃないけど、幼少期のトラウマが27歳まで響いている人間には簡単に克服できない問題だと思うんだよ…。

「私たちが愛し合うのに時間は掛からなかった!」って高らかに言われても、「なぜ?」と思えて仕方なかった。

ラブシャワー

「俺たちこうやって音楽かけながら踊ってるんだ!」ってレベルではねえ!!!!!!

えらく本格的に踊り始めて度肝を抜かれた。顔が整ってる男たちが踊るキラキラダンスとても良かった…。

みんな上手だなあと思ったけど、やっぱりどうしても真田くんを見てしまった。何が違うんだろう、関節の使い方? 動きに明らかな華があって、全体を見ようとするんだけど自然と目が引きつけられちゃって困った。

⑤テレビの生放送

いや、犯罪の告白はここでしちゃいかんだろ!!!

「俺たち万引きを重ねてましたが、それは貧しい人にパンを分け与えるためだったんです」って言われても納得できないのと同じで、いくら音楽守りたかったとしても法を犯してるのには変わらないし、その行為を100歩譲って見逃したとしても全国生放送で言ってはいけない…なんでスタッフはカメラを止めなかったんだろ…。

過去と現在、カズマとユウマがリンクして一つの歌を歌うって構図がよかっただけに、その前の犯罪告白が後を引いて頭の片隅に疑問符が浮かびっぱなしだったのが非常にもったいなかった。

そして端の方でスコアクラブを見ながら苦しげな表情をしているヤマト、うちわの出し方があまりにも雄々しくて笑ってしまった。紋所みたいだな…。

⑥ゲンキの告白

未成年の主張感がすごい! 彼何歳…? パンフレットをまだ真面目に読んでないんだけど、高校で出会ったなら少なくとも25歳以上だよなあ…。

ユウマの「付き合えないけど愛しているよ、人として」を救いと取るか残酷さと取るか、人によって意見が分かれそうだと思った。ゲンキが幸せそうに笑ってたからいいか…。

あとどうしても気になったのが、ゲンキの松葉杖逆では…?

タケウチの時も思ったけど、全体的に杖の扱いが豪快な舞台だなあと思ってしまった。まあみんな若者だしな…。

⑦社会に疲れたヤマト

椅子に座って足組んでる様がかっこよすぎて死ぬかと思った。絵画か…?

初登場時にどこか一筋縄ではいかない感があるな〜とかぼんやり考えてたら、まさかこんな役どころだったとは!

好きなものを規制する側になったらそりゃ辛いよ…精神病んでもおかしくない…。

「俺が音楽を諦めたんだからお前も嫌いになれ」ってすごい理論だなとは思ったけど、理論もなにも心がおかしくなってるんだからそんなこと考える余裕も無いか。

そしてこれはメタ的な発言になってしまうんですが、普段は優しげで声を荒らげることも滅多にない財木さんが、怒鳴ったり物をぶちまけたり散々暴れるのを見ては毎回怯えてしまった。ギャップが恐ろしい…。

それにしても、あのシーンのユウマがことごとく残酷な発言をしていて胸が痛くなるばかりだった。

音楽を規制しなきゃいけない立場の人間に音楽と関わった思い出をまくし立てたり、「寂しいな、人間って変わっちゃうんだ」と『現在のヤマト』を切り捨てたり、最終的には「まだマブダチだと思ってるから!」という…。

私がひねくれた人間だからかもしれないけど、「音楽を愛さないお前は俺にとって必要ない、でも昔のように音楽を受け入れるのならお前はまだ友達」というニュアンスを感じてしまった。

職を失って法を犯す以外にそれを実現する方法ある???

Gは音楽OKだとしても、まさかユウマの前で披露したり話題に出すわけにもいけないしね…「お前は禁止だけど俺はできるんだぜ!」って見せつける構図になってしまう。

法を遵守する限り、ヤマトはもう二度とユウマと音楽を楽しむことはできないんだよなあ。

まあ、「そんなに心病むような仕事なんて辞めて、お前はGなんだから思う存分音楽を楽しめよ!」という前向きなメッセージかもしれないしね。これは製作陣のみぞ知るって感じかな…。

「好きだったものを嫌いになるには大嫌いになるしかない」ってのは、ユウマに対する感情も含まれてんじゃないかと思った。

どうせ切り捨てなきゃいけないんだからいっそ思いっきり傷つけて、そして自分のしたことにも思いっきり傷ついて、二度と会わないことも辞さないって覚悟だったのかなあ…。

どちらかというと、友情に固執してたのはヤマトの方な気がする。ユウマはもっとこう…カラッとしているというか…。

出番は少ない役だったけど、十分すぎるほどの存在感を放っていたと感じた。もっとユウマとヤマトの関係を深掘りしてほしかったな〜。

⑧彼らの精神年齢はいくつなのか

特に気になったのはユウマかな。なんとなく、悩みの方向性が若すぎるような気がして…。

ヤマトに「大人になれよ!」って言われた後の、「(お前の言うような定義が大人だと言うのなら、的なセリフ)、俺は子どものままでいい」とか、いや〜子どもでいいとか言う年齢ではないのでは?

大人だ子どもだと議論をするのって、あと10歳ぐらい若い段階だと思うんだよな〜せめて20代前半? 27歳って結構いい歳なんだよね。

あと、親父の幻影に強く反発するのもちょっと年齢の低さを感じた。心の奥深くに潜んだ確執というより、熱いものをうっかり冷まさずに飲んでしまった時のような反射速度の憎しみというか…。

私自身が恵まれたごく普通の家庭環境で生まれ育ったからこその違和感なのか、そうでないのかの判断が難しい。

⑨階級分けによる弊害が分かりにくい

この作品自体がスピンオフだからそう感じるのかも。

居住区が決まってる、仕事も分けられる、音楽は禁止。これが大変なことだってのはわかる。

でもそれによる生活の格差とかが見え辛い。食べるものにも困ってなさそうだし、他の地区にも自由に出入りできてる。ヤマトがZに出入りできるのはいいとして、ユウマも普通にヤマトの所に面会行ってたよね?

確かに色んな苦労があるのはセリフから伝わってくるんだけど、暮らしぶりの苦しさとかはどうしても伝わってこなかった。2時間の舞台でそれを示せってのは酷だとは思うんだけどね…。

規制へ反発する描写が多かったぶん、「意外と普通に暮らせているのでは?」と感じてしまった。

⑩締め

他にも色々書きたいことはあるけど、キリがいいのでこの辺で。

前情報をあんまり入れないように努力してたので、バンドの演奏シーンとダンスの多さに驚いたけど、どれも観ていて楽しかった。

演奏してダンス踊って演技して…と、見どころがたくさんあったので、途中「ん?」と思うところがあっても観劇中はそこまで気にならず、面白さの方を多めに感じることができたと思う。

それだけに、疑問点とか腑に落ちない点が結構あったのが気になってしまった。

これを余白と見るか、解釈の余地があると考えるか、単に脚本の穴と思うかは人それぞれでしょう。ただ個人的に気になったというだけで…。

そして解決策を何一つ提示してない時点で私はかなり卑怯なことをしてるとも思うけど、非難してるわけではないので許してほしい。

まさに「考えるな、感じろ!」って雰囲気の舞台なので、あんまり深く考えすぎずに楽しめばいいのかな。

で、観劇が終わったら「あれはこういう意味かな?」「このキャラ、実はこうだったんじゃない?」と誰かと情報を共有することで、その人ごとの『27 -7order-』が完成するのかもしれない。

最後になりますが、東京での公演、本当にお疲れ様でした!!!

大千秋楽まで怪我や病気をしないよう、心から祈っています。